12/24/2006

続コー ...ペース設定等

Coeの本、やっと読めてきたので、ちょいちょいメモを書いていくことにする。


1. LTペースの判定方法
両者とも、LTペースを重要なトレーニング指標と考えている。

CogganはサイクリングにおいてLTを示す指標として、Functional Threshold Power(FTP)を導入した。FTP=1h TT平均パワーと定義される。

Coeは、15~20kmのペースがLTのペースに近いと考えている。ハーフマラソンはちょうど1時間前後にあたるから、両者はおおむね同じ見解にあるといえる。


2. トレーニング強度の基準
Cogganはまた、FTPを基準としたトレーニング強度(Coggan's Training Level L1~L7)設定を行うことでも知られている。

これを使っている方ならお感じの方も居られるかもしれないが、L5(Vo2Max強度)のあたりで、強度設定がどうも旨くない部分がある。たとえば、Coggan's L5は106~120%FTPとして定義されるため、選手によっては実際のVo2Maxペースが旨く当てはまらない場合がある(筆者自信がそうではないかと思う)。左記はFTPを単一の基準とするデメリットと考えられる。

ただ、例のCoggan妻のpptを見ると、「90%Vo2Max」といった強度が書かれている。つまり、本当はVo2MaxトレーニングはVo2Max基準で決めたいのだが、単純化のために、FTP基準でL5を設定することにしているフシがある。

一方、Coeは、トレーニングを下記4つの強度に大別している。Vo2Maxペースに対する比率を考えるのが基本だが、一部でLTペースに対する基準を導入している。
① 「有気的コンディショニング」=LSDペース。Coggan's L2と同じくらい。
② 「無機的コンディショニング」=LTペース。Coggan's L4(91~105%FTP)とは違い、100~105%LTペースであるようだ。
③ 「有気的キャパシティトレーニング」=Vo2Maxペース。Coeはこの強度を90~100%Vo2Maxペースとしており、具体的には3000m(8分前後)~10000m(30分前後)ペースでトレーニングを行うとしている。
④「無機的キャパシティトレーニング」=Anaerobic Capacityペース。Coggan's L6と大体同じか。

Coeのシステムは、Coggan's L3~Low L4にあたる強度が「空白地帯」になっていることが一つの特徴である。Cogganは、このゾーンこそ、大きな身体的ストレスなくトレーニングボリュームを稼ぐことができ、結果的にLT向上効果が期待できる、と考えているのと対照的である。


3. LTトレーニング
Cogganといえば、2x20min@L4や、Sweat Spot Training(SST)形式が有名である。彼は多くの場合、強度は90%FTPか、SSTの場合それ以下の強度でも十分と言っている。ただ例外的に、FTPがVo2Maxペースに漸近している場合のみ、100~105%FTPでのトレーニングを行うそうだ。あくまで基本は、「やや低めの強度で、より長時間行うべし」。

Coeの場合も、Coggan同様の2x20minが基本形だが、ペースはあくまで100%LTペースを基本とする。そして、「選手の反応を見て、ペースを僅かに調整する」という、微妙なやり方が書かれている。一つの例として、20min@100%LTペース + 15min@105%LTペースという例が掲載されていた。


4. Vo2Maxトレーニング
Cogganは、Coggan妻の例(クドイ)で言えば6x5min@90%Vo2Maxペースで週2回など。一般的な強度や回数の考え方は、よくわからない。

Coeは、競技者のフォーカスに合わせていくつかの例を書いている。たとえば、長距離(5000m~マラソン)選手の場合は、週1回のVo2Maxトレーニングを推奨している。また、第1週目は2x3000m@10000mペース(≒2×9.5分@90%Vo2Max)、
第2週目は3x2000m、第3週目は4x1600m、第4週目は6x1000m@3000mペース(≒6×2.5分@100%Vo2Max)、第5週目は再び3x2000m...というように、サイクルを設けて強度と時間を変えていくやり方を提案している。


5. マルチティア
時期によるトレーニングのマルチティア構成、バランスは、選手の個人事情に大いに依存するコーチング・マターである。Cogganは、この辺のスペシフィックなアイデアを提供していない。ただ、一般論として、トレーニング初期12週間はSSTやLTペースでひたすらFTPを向上し、その後Vo2Maxを鍛えるといった考え方をしているらしい。

Cogganの大好きなLydiardも、*最低*12週間のLT向上トレーニングを行うのが基本のようだ。

Coeも、なぜか12週間は「有気的土台」の構築に充てるとしている。すなわち、LSD、LTペース、Vo2Maxペースを5:0:0×4週間、4:1:1
×4週間、5:3:1×4週間、くらいの頻度と長さで混ぜていく、マルチティア構成をとる。その後は4:4:2くらいの構成にシフトし、LTペース、Vo2Maxペースが多くなる。

(つづく、予定。)


12/11/2006

treasure trove ...

http://www.bases.org.uk/newsite/pdf/Abstract%20book%20etc.pdf
これまた、おいしそうなネタがずらりと....

12/10/2006

コー式

土曜日は雨天であった。先日アマゾンに発注した書籍の一部が納品されたため、ローラー台でL3ワークを行いながら半分くらいまで読んでみた。

読んだのはこれである:
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4469264717/ref=sr_aps_b_/250-4538406-8461042

かのDavid MartinとPeter Coe(ロス五輪800/1500m金メダリストSeb Coeの父)による書である。Hunter/Coggan本をしのぐ濃い本。googleで検索していると、陸上関係に加え自転車関係の人も結構読んでいるようだ。

読んだ範囲では、運動生理学等、少々トレーニングを深く考えてみたい向きにはお奨めの一冊だと思った。理論面から実践面まで事細かに350ページも書かれていて、少し予備知識が無いと噛み砕けないかな、という印象はある。

Cogganその他CF、Wattgeの面子が言っていることと合致する部分・しない部分があるが、その辺はもっと読んでからまた書こう。

 * * *

さて、昨今CogganやLydiardにはまっていた筆者であるが、やはり一部のコーチ、ドクターの見解に留まらず、多様な見方と自分の経験をすり合わせ、より客観的な意見を構築することが望ましい。そういった意味で、ボート、マラソンなど、他のエンデュランススポーツには積極的に目を向けるようにしているし、トラック・サイクリングの世界も興味深い。

そんな中で、上記Coe本も手にしてみた。一つ目を引いたのが、マルチ・ティア(Multi-Tier)アプローチによるトレーニングの期分けである。「期分け」というのは、要するに、ピリオダイゼーションとかのこと。

Coe本では過去のコーチ(Lydiardを含む!)を引き合いに出して、その問題点を指摘している。曰く:

(1) 過去のコーチは ..... 比較的単一の強度レベル(言い換えれば、特定の代謝系やスキル)に、一定期間集中して取り組ませる。このため、他の能力が過度に退化したり、レースにおいて求められる多様な能力の醸成が不足となる問題点がある。

(2) Coe式では ..... 複数の強度レベルを、異なる割合で年中実施することで問題点を解消する。

筆者はマルチ・ティア、と聞いて、↓のCFのスレッドを思い出してしまった。
http://www.roadcycling.net/t309834.html
どうやら、(1)のアプローチを「クラシックなピリオダイゼーション」とも言うらしい。

まぁ、Coeの主張はなんとなく経験則に当てはまるような話ではある。なにより、マルチ・ティアの源流は、他ならぬ「クラシックなピリオダイゼーション」のふるさと、旧東欧圏だという。本家がマルチ・ティアの方をサポートしているということである。

サイクリング業界で言えば、「クラシックなピリオダイゼーション」派に当てはまるのは、Chris Carmichael(Lanceの、少なくとも“表向きの”コーチ)やJoe Friel(“The Bible”... Cyclist's Training Bibleで有名)である。

マルチ・ティア派は、Cyrille Guimard(指導者としては、Cofidisなどの監督を歴任)がいる。その弟子のLemondも含まれる。

だが実際には、上記CFスレッドにも書いてあるように、どちらの派でも結局、一種のマルチ・ティア・ライクなやり方を行っている。Lydiardもそう。LydiardファンのCogganでも、LT(FTP) Focus期に“hard group ride”といったL5/L6エフォートを思わせるセッションが入っている。

2005~2006年シーズン、筆者は冬から春はマルチ・ティア型(ハードなグループライドやクリテリウム形式を週1くらいで取り入れた)、それ以降は「クラシックなピリオダイゼーション」(LTレベルへのフォーカスを強めた)に以降するような形をとった。自分なりに、幅広い基礎能力→スペシフィックなTT能力というアプローチをとったつもりである。

CPSのデータを見ると、確かに春までにより多くのゲイン(少なくとも、20min Normalized Powerに関して)があったようにも見える。

またCoe本やHunter/Coggan本を読むと、運動強度によって動員される筋繊維の量が異なるらしい。つまり、運動強度が上がるにつれ、Type I→I+IIa→I+IIa+IIbとなる。よって特にFTP付近以上でのスピードアップを求めるなら、IIaの持久力を鍛えることが必要であって、そのためにはL5トレーニングが適しているようだ。

 * * *

まとめ .... やはり、なんらかの形でのマルチ・ティアを取り入れた方がよいのではないか。

12/03/2006

最高安定状態

故リディアード先生の理論は、Cogganをはじめ幅広い層に影響を残した。
http://lydiardfoundation.org/

↓の資料はその凝縮である。ぜひご一読を。
http://lydiardfoundation.org/pdfs/al_lecture.pdf

Cogganもかなり影響を受け(つつ、近代的知識でブラッシュアップし)ているのが分かる。

 * * *

この資料で、p.10の“Miles make the champions”というのは、似たような言葉をサイクリング業界でも金言として良く耳にする。

だが、サイクリング業界ではちょっと違う言い方が幅を利かせている。典型的に言えば、そう、“Time make the champions”だ。筆者は、これはちょっと違うと思う。あくまでマイルではないだろうか。トレーニングに対するアダプテーションが、その負荷量によるというなら、負荷量の評価はエネルギー代謝量に呼応しているべきだからだ。より確実にはパワー測定によるエネルギー計算であるべきだろう。

p.10~11のあたりには、ランニングにおける具体的トレーニング論が示されていて興味深い。ちなみにリディアードの“Steady State”(p.6参照)、日本語では最高安定状態とか訳すらしいが、これはCogganのFTPの概念にも受け継がれている。Steady Stateペース同様FTPを基に、トレーニングペースを算出したりする訳だ。どちらも有酸素代謝能力の一つの代表値である。

 * * *

別のリディアードの資料に、有酸素代謝能力を個人のリミットに到達(一つの見方としては、LT/FTP/Steady Stateペースが限りなくVo2Maxペースに近づいている状態)せしめるためには、数年単位で取り組まなければならないと書いてある。これは、ボートや水泳でも同じようだ。ジュニアタレントを発掘し、早期から数年スケールで*有酸素*代謝能力の向上に取り組まさせるのが、やはり重要ということだろう。

さらにサイクリング業界について言えば、(語弊を承知で言うなら)無酸素代謝能力は言うにおよばず、レース経験でさえ、有酸素能力の最大化に要する時間に比べれば、短時間でそこそこ獲得できるものではないだろうか。少なくとも、無酸素代謝能力は僅か10~12週間で最大化できると書いてある(p.25)。
※もちろん、経験はピークにいたるまでもっとも時間がかかるのかも知れないが、「そこそこ必要なレベル」でよければ、そうでも無いような気がする。あくまで私見。


そしてCPSをお使いの方なら、クリテリウム的な断続的エフォートでさえ、そのNormalized PowerはFTPによって制約されている(つまり、FTPの高い選手ほど、沢山アタックでき、すぐ回復できる)ことをよくご存知であろう。FTPが低ければ、そもそも速い集団内で余裕がなくなるはずだ。つまり、レース経験を積むどころではないと思う。
※無酸素能力トレーニングしなさすぎ、という可能性も無論あるにはあるけど。

だからやはり、筆者は有酸素代謝能力の最大化が殆どの選手にとって重要課題と考える。日本のトップ選手は、どれくらい有酸素代謝能力の最大化を完了しているのだろうか?

12/01/2006

Crrまとめデータ

http://www.biketechreview.com/performance/images/AFM_tire_testing.pdf

CrrデータといえばTour Magazineのものが有名だが、BTRの有志がコツコツと集めたローラーテストデータもポツポツ投稿されている。

これは
その中でもAFMさんによる力作。

Record clincher/Pro2 Light/Evo CX/Dedaなんかが上位にくるのは相変わらず。ちなみに筆者はパンクリスクが怖いので、Pro2 Light + Michelin Latex 18/20派である。RecordやDedaはかなり薄い(→危ない)、らしい。

Tubularでも、キワドイつくりのRecordなんかはクリンチャーに匹敵するものがある。Zipp TubularはVittoria製らしいが、ちょっと謎。グルーがよく乾いていた状態だったと報告されていたっけ。

Schwalbe Ultremoなんかも早速載ってるけど、いまいちだなー。

Tufo Race Lightは、(とてもTufoとは思えない)すごい結果が出ているが、これはトラック用タイヤ。よく見ると、0.0026台を出しているときは200psi (!)....

参考として、この表の見方。Crr値0.0001につき,40kph付近では1W程度の抵抗を生じると考えればよい。ただしPower=Crr*M*g*Vなので,低速域(10~15kph)では0.3W程度の差となる.
※pdfのp.2に書いてある通り、上記はM=45[kg]付近で、一輪相当の想定。つまり、体重+自転車で90kgになるライダーが、後輪だけ3本ローラーに乗せて抵抗を測っていると思えばよい。二輪では倍となる。

  *  *  *

ちなみに、2006年のノリクラチャンプタイヤ、Maxxis Xenith Equipe Legere (日本名、Xenith Pro Light)のデータも以前ポストされていた(以下に抜粋)。Michelin Pro2Race +17%の転がり抵抗。同タイヤは低転がり抵抗の62Aコンパウンドを全体に使用している。上位製品のCOURCHEVELもセンターは62Aコンパウンドだが、ケブラーベルトが入っている分Equipe Legereより、やや転がりにくいと思われる。いずれにせよ、Pro2 RaceやPro2Lightにはかなわない。
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Tire/width/pressure/speed/watts/Crr
XEL/23/7.5/20.0/81/Crr .0042SRM
XEL/23/7.5/19.8/79/Crr .0041SRM
XEL/23/7.5/19.9/80/Crr .0042SRM

PR2/23/7.5/20.5/73/Crr .0036SRM
PR2/23/7.5/20.0/71/Crr .0036SRM
PR2/23/7.5/20.6/73/Crr .0036SRM

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ということは、アノ選手やコノ選手はPro2LightかRecord Clincherを使えば....???

実践PMC

http://www.freewebs.com/trainwithpower/PM.ppt

PMCは実際どれだけ使えるか? AC、例によって自説流布のためなら気前よくデータ放出。見習いたい態度だ。

前半のところはCPSのサイトにすでに書いてあるからいいとして。

p.7/8に、過去の同様な取り組みでCTL/ATL Constatntにあたるパラメータ(T1/T2)にどのような値が採用されていたかしめしている。興味深いのは、CTL Constant(T1)が殆ど40前後(CPSのデフォルト=42に近い)なのに対し、ATL Constant(T2)が最近のワークでは11, 12, 19と、段々大きくなっている点。CPSでのデフォルト値は7だが、Cogganもp.23でATL Constantに注意せよ、言っている。こちらは変化させてフィットを見た方がよいのかもしれない。

p.12はおなじみAngie Vargasのデータだ。なんで毎回これなんだ???
ああ、でもこのスライドだといつ何のイベントがあったのか分かる。

p.15/p.17もおなじみ... 自分のデータだな。

重要なのは、p.20以降。
PMCベータテスターが、各デュレーションに対する平均最大パワーを記録したときの、TSB値が集計されている。Cogganは5min以下のデュレーションに対する最大パワーは、よりTSBの高いときに出やすいと言いたいらしい。正直、あまり著しい傾向は見られないような気もするが....
どっちにしろ、TSB+5~15付近で最頻となる傾向はありそう。
 

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