12/03/2006

最高安定状態

故リディアード先生の理論は、Cogganをはじめ幅広い層に影響を残した。
http://lydiardfoundation.org/

↓の資料はその凝縮である。ぜひご一読を。
http://lydiardfoundation.org/pdfs/al_lecture.pdf

Cogganもかなり影響を受け(つつ、近代的知識でブラッシュアップし)ているのが分かる。

 * * *

この資料で、p.10の“Miles make the champions”というのは、似たような言葉をサイクリング業界でも金言として良く耳にする。

だが、サイクリング業界ではちょっと違う言い方が幅を利かせている。典型的に言えば、そう、“Time make the champions”だ。筆者は、これはちょっと違うと思う。あくまでマイルではないだろうか。トレーニングに対するアダプテーションが、その負荷量によるというなら、負荷量の評価はエネルギー代謝量に呼応しているべきだからだ。より確実にはパワー測定によるエネルギー計算であるべきだろう。

p.10~11のあたりには、ランニングにおける具体的トレーニング論が示されていて興味深い。ちなみにリディアードの“Steady State”(p.6参照)、日本語では最高安定状態とか訳すらしいが、これはCogganのFTPの概念にも受け継がれている。Steady Stateペース同様FTPを基に、トレーニングペースを算出したりする訳だ。どちらも有酸素代謝能力の一つの代表値である。

 * * *

別のリディアードの資料に、有酸素代謝能力を個人のリミットに到達(一つの見方としては、LT/FTP/Steady Stateペースが限りなくVo2Maxペースに近づいている状態)せしめるためには、数年単位で取り組まなければならないと書いてある。これは、ボートや水泳でも同じようだ。ジュニアタレントを発掘し、早期から数年スケールで*有酸素*代謝能力の向上に取り組まさせるのが、やはり重要ということだろう。

さらにサイクリング業界について言えば、(語弊を承知で言うなら)無酸素代謝能力は言うにおよばず、レース経験でさえ、有酸素能力の最大化に要する時間に比べれば、短時間でそこそこ獲得できるものではないだろうか。少なくとも、無酸素代謝能力は僅か10~12週間で最大化できると書いてある(p.25)。
※もちろん、経験はピークにいたるまでもっとも時間がかかるのかも知れないが、「そこそこ必要なレベル」でよければ、そうでも無いような気がする。あくまで私見。


そしてCPSをお使いの方なら、クリテリウム的な断続的エフォートでさえ、そのNormalized PowerはFTPによって制約されている(つまり、FTPの高い選手ほど、沢山アタックでき、すぐ回復できる)ことをよくご存知であろう。FTPが低ければ、そもそも速い集団内で余裕がなくなるはずだ。つまり、レース経験を積むどころではないと思う。
※無酸素能力トレーニングしなさすぎ、という可能性も無論あるにはあるけど。

だからやはり、筆者は有酸素代謝能力の最大化が殆どの選手にとって重要課題と考える。日本のトップ選手は、どれくらい有酸素代謝能力の最大化を完了しているのだろうか?

6 件のコメント:

かんchan さんのコメント...

今晩は、昨日は思いがけない所で会いましたね、何とか日没前に帰宅できました。
 あの辺りはホームコースですか、定峰で別れたあと白石で3人、コンビニで10人、松郷で2人のサイクリストがいました、群馬ではシーズン中でも2~3人位しか会わないのに、ここは凄い所ですね。今度は白石ttに行こうかと思っているのですが、入り口看板から上の5差路までで良いのですか、皆やっている様なので私もチャレンジしようかと思います。何分位で登るんだろう・・・とりあえず80%でやってみます。
 帰りに寄居の橋の近くでたい焼きを食べてきました。久しぶりの味に感激しました、また食べにいこうかと思います。
 シーズンオフは長距離を走りながら、おいしい物を食べるみたいのもいいですね、しばらくはそちらの方を走るのでよろしくお願いします。

tarmac2006 さんのコメント...

どうもおつかれです。寒くなってくると、ホットな補給食が旨いですね! 私もやたらうどんを食べています。

白石ですが、昔某所にタイムランキングがありました。無くなったなー、とおもっていたら、最近はこちらにあるのですね↓
http://yajima.ath.cx/~arakawa/time/shiraishi/touge.php
ということで、23分台で登れば速いようです。たしかコンドルさんはもっと速かったような?? スタートとゴールはその場所で間違いないです。

匿名 さんのコメント...

日本のトップクラスはVO2maxが90くらい出るそうです。
ランス・アームストロングとほとんど同じ!

ではこの成績の違いは…。

sugaken さんのコメント...

>“Miles make the champions”

パワーベーストレーニングの場合はさしづめ“TSS makes the champions”でしょうか。チャンピオンにはなれなくてもせめてチャンピオンクラスには上がれるように、TSSを積み上げていこうと思います。今朝も走ってようやくCTLが20TSS/day超えました・・・

tarmac2006 さんのコメント...

>livestrongさん
私の知り合いでもVo2Maxだけ、かのM船選手より高いヤツがおりますよ(笑) 同じVo2MaxでもpVo2Maxが低い、つまり、サイクリング・エコノミーが低い訳でしょうか? 素人にはよくわかりません。

ただ、サイクリング・エコノミーはトレーニングによって最も変化しづらいそうですよ (参照 この辺→ http://groups-beta.google.com/group/wattage/browse_frm/thread/975d949ea64dfce4/
もしくはこの46番の辺→
http://groups-beta.google.com/group/wattage/browse_frm/thread/a4a7fd190e32e371/)。

エコノミーがあまり変化しないものだとすれば、やっぱりVo2MaxかLT(Vo2@LT)を上げるしかないんでしょうね。もし、世界トップの集団と日本トップの集団とで本当にVo2Maxに有意差が無いというなら、「動かない壁」efficiencyを改善するより、LTを向上した方が得策では?と、このど素人は愚考いたします。


> sugakenさん
しかし数年オーダーでのキャリア蓄積を考えた場合、果たしてTSSはよいメトリックでしょうか?

確かに、TSSもマイルを反映してはいるのですが、FTPによって正規化されているという特徴があります。このため、年次漸進的に有酸素代謝能力/FTPが向上し、走行可能マイルが向上しても、しなくても、そして減少しても、その蓄積ペースは同じ。

これに対してマイル(ああ、もっといいメトリックがありますね... “消費カロリー”です!)は、有酸素代謝能力/FTPの向上無しには蓄積ペースが増えない。そう、だから数年オーダーを視野に入れているリディアードは“*Miles* make the champions”と言っているのです(ややコジツケ)。Lydiard had it right!

sugaken さんのコメント...

う~ん、では "Joules make the champions." ではいかがでしょう。
TSS = Normalized_Work / FTP
ですから
Normalized_Work = TSS * FTP
で、Work(仕事量=Joules)で見れば積み上げた時間・距離にFTPの向上分も折り込めるのではないかと思いました。どうしてもパワーメータがないと測定できない物理量に拘ってみました(笑)。

 

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