Coeの本、やっと読めてきたので、ちょいちょいメモを書いていくことにする。
1. LTペースの判定方法
両者とも、LTペースを重要なトレーニング指標と考えている。
CogganはサイクリングにおいてLTを示す指標として、Functional Threshold Power(FTP)を導入した。FTP=1h TT平均パワーと定義される。
Coeは、15~20kmのペースがLTのペースに近いと考えている。ハーフマラソンはちょうど1時間前後にあたるから、両者はおおむね同じ見解にあるといえる。
2. トレーニング強度の基準
Cogganはまた、FTPを基準としたトレーニング強度(Coggan's Training Level L1~L7)設定を行うことでも知られている。
これを使っている方ならお感じの方も居られるかもしれないが、L5(Vo2Max強度)のあたりで、強度設定がどうも旨くない部分がある。たとえば、Coggan's L5は106~120%FTPとして定義されるため、選手によっては実際のVo2Maxペースが旨く当てはまらない場合がある(筆者自信がそうではないかと思う)。左記はFTPを単一の基準とするデメリットと考えられる。
ただ、例のCoggan妻のpptを見ると、「90%Vo2Max」といった強度が書かれている。つまり、本当はVo2MaxトレーニングはVo2Max基準で決めたいのだが、単純化のために、FTP基準でL5を設定することにしているフシがある。
一方、Coeは、トレーニングを下記4つの強度に大別している。Vo2Maxペースに対する比率を考えるのが基本だが、一部でLTペースに対する基準を導入している。
① 「有気的コンディショニング」=LSDペース。Coggan's L2と同じくらい。
② 「無機的コンディショニング」=LTペース。Coggan's L4(91~105%FTP)とは違い、100~105%LTペースであるようだ。
③ 「有気的キャパシティトレーニング」=Vo2Maxペース。Coeはこの強度を90~100%Vo2Maxペースとしており、具体的には3000m(8分前後)~10000m(30分前後)ペースでトレーニングを行うとしている。
④「無機的キャパシティトレーニング」=Anaerobic Capacityペース。Coggan's L6と大体同じか。
Coeのシステムは、Coggan's L3~Low L4にあたる強度が「空白地帯」になっていることが一つの特徴である。Cogganは、このゾーンこそ、大きな身体的ストレスなくトレーニングボリュームを稼ぐことができ、結果的にLT向上効果が期待できる、と考えているのと対照的である。
3. LTトレーニング
Cogganといえば、2x20min@L4や、Sweat Spot Training(SST)形式が有名である。彼は多くの場合、強度は90%FTPか、SSTの場合それ以下の強度でも十分と言っている。ただ例外的に、FTPがVo2Maxペースに漸近している場合のみ、100~105%FTPでのトレーニングを行うそうだ。あくまで基本は、「やや低めの強度で、より長時間行うべし」。
Coeの場合も、Coggan同様の2x20minが基本形だが、ペースはあくまで100%LTペースを基本とする。そして、「選手の反応を見て、ペースを僅かに調整する」という、微妙なやり方が書かれている。一つの例として、20min@100%LTペース + 15min@105%LTペースという例が掲載されていた。
4. Vo2Maxトレーニング
Cogganは、Coggan妻の例(クドイ)で言えば6x5min@90%Vo2Maxペースで週2回など。一般的な強度や回数の考え方は、よくわからない。
Coeは、競技者のフォーカスに合わせていくつかの例を書いている。たとえば、長距離(5000m~マラソン)選手の場合は、週1回のVo2Maxトレーニングを推奨している。また、第1週目は2x3000m@10000mペース(≒2×9.5分@90%Vo2Max)、第2週目は3x2000m、第3週目は4x1600m、第4週目は6x1000m@3000mペース(≒6×2.5分@100%Vo2Max)、第5週目は再び3x2000m...というように、サイクルを設けて強度と時間を変えていくやり方を提案している。
5. マルチティア
時期によるトレーニングのマルチティア構成、バランスは、選手の個人事情に大いに依存するコーチング・マターである。Cogganは、この辺のスペシフィックなアイデアを提供していない。ただ、一般論として、トレーニング初期12週間はSSTやLTペースでひたすらFTPを向上し、その後Vo2Maxを鍛えるといった考え方をしているらしい。
Cogganの大好きなLydiardも、*最低*12週間のLT向上トレーニングを行うのが基本のようだ。
Coeも、なぜか12週間は「有気的土台」の構築に充てるとしている。すなわち、LSD、LTペース、Vo2Maxペースを5:0:0×4週間、4:1:1×4週間、5:3:1×4週間、くらいの頻度と長さで混ぜていく、マルチティア構成をとる。その後は4:4:2くらいの構成にシフトし、LTペース、Vo2Maxペースが多くなる。
(つづく、予定。)
2 件のコメント:
>L5(Vo2Max強度)のあたり
それは私もちょいと思ってます。私のMAPも320WあたりでFTPの133~145%ですから120%は完全にはみ出してます。最初はRic Sternのゾーニングを使おうと思ったら、そっちだと今度はTTペース(FTP)が高すぎてどうもうまくないという・・・。どちらもそれなりに練習を積んでFTPがMAPにかなり近づいているサイクリストを念頭に置いてデザインされているのかも知れませんね(どちらかというとCogganのレベルの方がよりその傾向が強いような)。
やはりCoeのように、Vo2MaxとLTの両方を用いて設定する方が、理想的ですよ
ね。LTとVo2Maxの比は個人差が大きいし、トレーニングによって著しく変
化してしまうし。
自分も、L5は5MPを基準にして決めるように変えました。
SternやCogganのやり方について言えば、単純化重視のためにデメリットを生じている訳で、しょうがないといえばしょうがないですね。
ちなみに、Coeは10分走ペースとしてVo2Maxペースを推定した上で、LTペースがよく分からない場合、「低めに見積もって80%Vo2Maxペースとする」とも書いています....「それ本当に低めなの?」と、一瞬突っ込みたくなりました(笑)
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