3/21/2006

K・G選手の研究

本選手は2002年までヒルクライムで特に抜きん出た実績はなかったが,数年間の間に脚質を変化させた結果,2004年Mt.富士優勝,2005年乗鞍優勝など,現在ヒルクライムでは比類ないパフォーマンスを発揮している.その練習方法を以下に分析した.
※情報源
[1] サイクルスポーツ誌2005年5月号
[2] http://gorugo.jugem.jp/

■(1) 基本情報
MaxHR: 183
LT-HR:
①レース時は165(乗鞍の平均HR=157,飯田の平均HR=172の平均より推定).
これをLT-HR1とする.
②練習時のLT-HRは160前後と推定される.これをLT-HR2とする.
これはレース時のHRは興奮などにより上昇するため,練習時と異なるLT-HRとなるからである.ここではLT-HR2 = LT-HR1 -5拍とした.


(2) ベース期のトレーニング
HR130 (=76%LT-HR2)を上限とした数時間(3時間以 上)の走り込み,いわゆるLSD(L2走)を“かつては”行っていた模様.しかしながら,[2]によれば2004年~2005年のオフシーズンには,この ような数時間の走りこみは行っておらず,走っても最大で4時間であったと言っている.ただし,週・月あたり何回走ったのか,また総トレーニング時間がどれだけであったのかは不明.


(3) レース3~2ヶ月前
・ワークアウト1:
30分のL4ペース走をHR150(94%LT-HR2)~155(97%LT-HR2)で.推定TSSは40~50.

・ワークアウト2:
20秒全開/20秒回復のL6インターバルを4回繰り返す.これを1セットとして,1~3セット行う.推定TSSは6~7/セット.

ワークアウト1は週4回,ワークアウト2は週1回行っていた模様.1回の総トレーニング時間は2.3時間.トレーニングは週4日としている.ワークアウト1の本数は不明だが,総トレーニング時間から判断して1~3本/日と考えられる.
週当たりの総トレーニング時間は9.2時間,推定TSSは560~760.


(4)レース2~1ヶ月前
・ワークアウト1:
30分の“やや弱い”L4ペース走を行う.HRは不明確だがHR145(91%LT-HR2)~150(94%LT-HR2)か.推定TSSは35~45.

・ワークアウト2:
いわゆる“ソリア”.HR160(100%LT-HR2)前後を目安としている.持続時間,回復時間などは不明.

ワークアウト1,2とも本数は不明.1回の総トレーニング時間は3.5~2時間.トレーニングは週4日としている.週当たりの総トレーニング時間は9.5~11時間,推定TSSは不明.


(5)考察
・レース3~2ヶ月前
- 600~700前後のTSSはトレーニング負荷量としてはやや少ない部類.しかしながら総トレーニング時間の20~65%をL4ペース走に割り当ており,この期間に効率よくLT向上を図っていることが分かる.
- この期間のL6セッションは,回復時間の短さから判断して,実際にはL5(Vo2Max)のパワー向上を狙ったものと考えられる.
- 即ち,この期間は大量のL4と僅かのL5を混合してLT,Vo2Maxの向上に努めていると言える.

・レース2~1ヶ月前
- ソ リア走の詳細が不明であることから,そのトレーニング効果の推定は困難.
- ただし一般的なソリアの定義(3分持続走⇒回復走⇒3分持続走...を繰り 返す.3分持続走の間に最高HRが100%LT-HR2に達するようなインターバル)はL5のインターバルそのものであることから,Vo2Max向上を図って いるものと考えられる.
- また,L4ペース走の強度をやや弱としていることは,負荷の高いL5インターバルのボリュームを相当増やしていることを意味してい る.

・その他
- 本選手の場合,2002年以前の実績から判断して,もともとL6のパワーにはある程度優れていたと思われる.その後,L6のパワーをある程度維持しながらL4/L5トレーニングにフォーカスを移したことが,競技結果に繋がっていると考えられる.
- 本選手は巷で「平地で重いギアを踏んでいる」といわれているが,その明確なケイデンス設定は不明であった.
- 本選手は上記の他にウェイトトレーニングを実施しているが,これに関して本調査では分析を行っていない.今後の追加調査が望ましい.


以上

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